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KDP本をいくつか読んでみましたシーズン1第四回「落涙と怪物」

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落涙と怪物

落涙と怪物

 

  「何を、見ていたんですか?」
「――人殺し。」

一人の男子生徒が惨殺された。容疑者は、学校のカースト最上位に立つ被害者の「親友」たち。
「あの四人の誰かが……逢坂先輩を殺した犯人」
黄昏の教室で、二人の少女が繰り広げる「推理合戦」。その末に辿り着く、意外な真相とは。

―― 一体、誰が「怪物」なのか。――

最後に明かされる、あまりに激しい犯人の「渇望」に戦慄せよ。

  短めの作品です。が、詰まっています。何がって? 悪意が!

 いや、悪意では無いのかもしれません。ええ、悪意ではないでしょう。紹介文にもありますが「渇望」です。渇望は渇望故に、純粋なのです。あぁ、なんて人間的なんだ! 人間だけだ、こんなことを考えるのは! 規律、規範、法律、常識。世の中には、いろいろなモノサシがありますが、その基準は絶対値でしょうか? 相対値でしょうか。犯人の行ったこと、「殺人」は法律とか倫理とか道徳とかで、裁けるかもしれませんが、この「渇望」を誰が咎められるでしょう。素晴らしい動機。人が人を殺す動機としては、最も綺麗なもの一つでしょう!

 読み終えた後の高揚感……、たるや……! 殺人は罪であり罰を受けるものだけれど、この渇望に罪は無い、innnocence!

 きっと誰にも共感されない、世界でただ一人、自分だけが理解出来る世界。

 しばしば狂気と呼ばれるそれは、しかし、どっちのモノサシが狂っているからなのでしょう?

 

 ミステリー物は、あまり数を読んだことが無いので、推理しながら読む、ということは苦手です。推理合戦では、「うんうん。そうそう」などと頷きながら、一体どんな結末に向かうのだろう、とわくわくしながら読んでいたのですが、それがひらりと翻され、嘲笑うかのような結末と、語られる動機に、読んでいた最中のわくわくとは逆位相のサインカーブが浮かび上がりました。

 この感じ、これとこれだなー、と思った作品が二つ。でも、ネタバレになりそうで怖いので伏せます。ちなみに小説と映画です。

 あと短い作品って、書くのが難しいんですが、この作品は凄くスマート。オススメです。