秋の夜長 最終夜「秋の夜長」
秋の夜長 最終夜「秋の夜長」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
残暑が少しずつ和らいでいき、微細なグラーデーションながらも確実に季節が移り変わっているな、と感じられるようになってきた、とある夜。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
夢の中にトルーマン・カポーティが出て来て、「ヘイ、ユー。今日から掌編小説を書いて、それをTwitterにアップしな! アンダスタン?」などと言う。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
って、カポーティって、こんなキャラなのか?ちょっとジャニーさん入ってないか?とも思うけれど、僕はその日から、なんとなく書き始める。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
ちょうど夏のおわりに短編集をKDPで出していたので、なんとなくそれと関連性のある感じに……、夏ときたから次は秋かな……、などと考えながら。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
掌編小説って、具体的にどのくらいの長さのものを書けば良いのか判らなかったけれど、これまたなんとなく三千字くらいと決めて、いくつか書く。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
うーん、短いお話というのも意外と難しい。僕はこれまで8〜10万字くらいの長編とか、2〜4万字くらいの短編はいくつか書いたことがあるのだけれど、三千字しかないと物語を起こして展開させて収束させるのって、けっこうな無理ゲーだ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
案の定、いくつかは五千字台になる。むむむ。パッと伝わって欲しいから人物描写もフィクション度が上がる。お、奥深いぞ、掌編小説!
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
なんてことを一人で悶々と考えるけれど、別に僕は小説家というワケではない。普段は会社員。良く言ってインディ作家というところ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
くっそ〜、カポーティめ〜!とキーボードをパシャパシャと打っていると、部屋のドアがノックされる。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
「はい?」僕は立ち上がり、ドアを開ける。
「コーヒー淹れるけど、飲む?」透子さんだ。
「あ、うん。ありがとう」
「そっちで、飲む?」
「え?」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
そっち、というのは僕の部屋のことで、玄関の脇にある四畳半くらいのスペースを書斎代わり使っている。『書斎』っていうほど立派なものではないけれど。
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「いや、向こう行くよ」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
僕らが住んでいるマンションは3LDKで、『書斎』の他にはリヴィング、ダイニング、寝室。小説を書いているときは、僕は籠りっぱなしだから、たまーにチクチク言われる。今回は言われる前に察して出た。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
「牛乳は?」
「うーん、いらない」と思ったけれど、胃がちょっとダルかったので「やっぱ入れる」と答える。
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「次の土曜日だけど……」
「え、なんだっけ?」
「やっぱり。忘れてる」
「えーと?」
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「結婚式の衣装合わせ。私、何度も言ったよね?」
「あー、そうだった……」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
うへー、完全に忘れてた。でも、忘れていただけで他に何か予定を入れたわけではないので別に支障はないのだけれど、透子さんは、そういうスケジュール管理的なことを気にしてるんじゃなくて、僕が乗り気じゃないのが気に入らないっぽい。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
いや、乗り気じゃないというわけではないのだ。まぁ、あの真っ白なタキシード?みたいなのを着るのは正直、凄く恥ずかしい。タキシードなんか来たらタキシード仮面様のコスプレになりそうでイヤだ、という気持ちも無くはない。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
けれど、以前に僕が「結婚式、やらなくても良いんじゃないかな」と言ってしまったのが尾を引いているのだ。いや違うんですよ、本当は……。
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「どうでも良いって思ってるんでしょ?」
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「いや、そんなことないって。凄く楽しみにしているし」
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「もういい。私、一人で行く」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
「いやいや、ごめんて。そうじゃないんだって……」と、弁明するけれど、言葉を重ねるごとにウソっぽくなってしまう。
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こういうとき、電脳化してプラグを繋げば以心伝心!みたいなことが出来ればなー、と思うけれど、それは甘えで、最初に言ってしまった僕の言葉のせいなのだから、僕が努力しないといけないのだ。たとえ、最初の言葉のニュアンスを誤解されているとしても。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
とまぁ、そんなテンションのまま土曜日になり衣装合わせへ。透子さんは事前にカタログを見ていくつかアタリを付けているようだ。「これとこれと……、あと、これかな……」と、見せてもらったけれど、正直違いが判らない。どれも同じに見える。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
「でも、これはちょっとオバさんくさくない?」「このヒラヒラは安っぽいよ」と頑張ってコメントしてみても、批判的なことしか言えない。透子さんは、段々無口になる。うーむ……。
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お店に着くと、バレリーナみたいなお姉さんが笑顔で案内をしてくれる。透子さんのドレスをいくつか着たあと、僕のタキシードをいくつか合わせてみるみたいだ。
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透子さんは隣りの部屋へ。僕は控え室みたなところで一人待たされる。女性の着替えは時間がかかる。でも、まぁ良い。iPhoneのKindleアプリで小説を読む。
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「お茶かコーヒーをお持ちしますが」iPhoneから目を上げると、制服を着たお姉さんがいた。
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「あ、じゃあ、コーヒーをお願いします」
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「かしこまりました。あの……」
「はい?」
「パズドラですか?」彼女は微笑みながら僕に言う。
「え?」彼女は僕のiPhoneに視線を向ける。「あ、いえ……。えっと読書です」
「あ、そうですか。失礼しました」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
彼女が出て行ったあと、まぁ、こんなところでスマホをいじっていたら、いかにもやる気ありませんって感じだよな、と思う。次からは紙の本を持ってこよう。
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仕方が無いので、その辺にあるパンフレットをパラパラと捲る。
三十分後くらいに、透子さんが出てくる。思わず、おおぉーと声が出る。
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「どうかな?」透子さんが言う。
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「凄く良いよ。でもせっかくだから、ちゃんとお化粧もしてくれば良かったね」と言ったあと、あー、また余計なこと言ってしまったかなー、と焦る。なんかこう自分でも不思議なのだけれど、自然と口から出てしまうのだ。
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けれど、透子さんは僕の発言を咎めず、次の衣装に着替えに行く。その後、もう二着のドレスを試着する。なんだかんだで二時間くらいかかる。僕はもう待ちくたびれてしまった。
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僕のタキシードは三着で三十分くらいだった。なんか高い割にはテロテロとした生地だな、と思ったけれど、今度は口に出す前に止めた。口は災いの元。バレリーナと目が合う。あ、ヤベ。目は口ほどに物を言っていたかな? 大丈夫かな?
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帰りに夕食を食べる。透子さんは何でも良いと言うので、ステーキにする。
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「どうだった?」と前菜をつつきながら透子さんが言う。
「正直、どれも同じかなって」
「そう? 私は二番目のが良いかなって思ってる」
「他に何を迷っているの?」
「だって、小物と合わせたりとか。そういうバランスだってあるんだよ」
「なるほどね」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
「大木くんは?」
「僕は……」透子さんは、まだ僕のことを『大木くん』という。「あの最初の一番スタンダードなヤツかな」
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もう既に籍は入れてあるから、名字で呼ばれるのは変なのだけれど、一応かしこまった場とか他人がいるときは弁えてくれているので、まぁ良いかなってことにしている。理由を聞くと、「だって私の中ではさ、大木くんは大木くんなんだもん」などと言う。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
「あのブラウンのヤツは? あれもシュッとしてて良かったよ?」
「うーん、正直僕のは何でも大丈夫だよ。それより、君の衣装を凝ろうよ。なんだっけ?小物?とかあるんでしょう?」
「うん」
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ロマンスカーで家に帰る。透子さんがお風呂に入っている間に、例の掌編小説を書き進める。
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こういうのはアイディア一発くらいの方が意外と書けるもんだ。ということで、適当に思い浮かんだワードで広げていく。今夜はなぜか『キャンドル・ジュン』が思い浮かぶ。一作書ける。よし、次。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
お風呂場の方から透子さんの鼻歌が聴こえる。今日、楽しかったのかな。なら良いのだけれど。
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ふと、透子さんのお父さんのことを思い出して、ちょっと書く。色々考えて、性別を変える。
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この歳になると、結婚とかその先にある子育ての情報とか、そういう話が自然と耳に入るようになる。幼少期にきちんと愛情を注がないとダメな子供になる的な、脅しのようなことも聞く。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
まぁ、言わんとしていることは判らなくもない。でも自分の子供が可愛いなんてのは、本能みたいなもので、当たり前すぎてわざわざ口にすることすら僕は薄ら痛いと思う。
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そうはいっても溢れ出てしまうのが愛情なのだろうし、自分の遺伝子を残すための本能を滑稽だと笑う行為自体も、スノッブというかダサいとも思う。
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けれど、多くの子育て論的なものの根底にある「親が子供の未来をすべて決めてしまう」的な論調が、僕はなんとなく嫌いだ。
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世の中、ダメな親はたくさんいるかもしれないけれど、その子供がすべてダメなわけではない。
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自分自身を振り返ってもそうだ。育てて貰ったことに感謝はしつつも、僕が今、僕という人間になったのは、少なくとも物心ついてからは僕の意思と選択の結果のはずなのだ。
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僕は、子供を放ったらかして整形手術に明け暮れる母親を看取るという筋書きの掌編を書く。
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僕は何に怒っているのだろう?
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透子さんの父親は確かにクズだった。良い歳して自分の子供に寄生していた。なんとか引きはがすことは出来たけれど、血のつながった親子に対して、他人がどれほど干渉するべきなのか。どこまでなら許されるのか。僕は迷っていた。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
次に僕は、『家』という『中』である場所を『外』にしてみたらどうなるのだろうかと考えながら掌編をまたひとつ書く。
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透子さんは母親にも無視されていたことがあるらしい。本人曰く、ほんの一時でネグレクトというほどではなかったらしいのだけれど。
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『円満な家庭』というキーワードでも書く。
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確かに家庭の雰囲気が、その人の雰囲気を作るってこともあるのかもしれない。でも、それだけじゃないだろう。透子さんは良い人だ。だから結婚した。
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なんとなく、世間の論調が許せないのは、それで透子さんを否定されているような気になるからだ。親がダメでも、ちゃんとやっている子供はいるのだ。
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「お風呂上がったよー」ドア越しに、透子さんが言う。
「あ、うん」僕は手を止めてpagesを保存する。
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お風呂から上がり、ダイニングを通ってリビングに行こうとすると、透子さんが「あ、冷蔵庫にビールあるよっ」と言う。んー、どうしようかな……。このあと、もうちょっと書くなら……、と一瞬思ったけれど、飲むことにする。
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「グラスに移す?」僕はきく。
「うん。準備してあるよ」
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冷蔵庫には缶ビールとグラスが冷やしてあった。互いに注ぎ合う。透子さんはいつまでたっても、これが下手で、僕のグラスだけ泡だらけになる。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
「上達しませんな」
「泡もビールだから」
「でも、これ半分以上泡だよ」
「大木くんはうるさいなー」
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まぁ、良いのだ。僕は透子さんが適当にやってくれている姿を見るのが好きなのだ。なんというか僕の前では、張りつめていない、安心しきっている状態でいてくれることが。
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「あのさ」僕は言う。泡をやっつけて、やっと一口だけ液体を飲む。「結婚式、やる気ないわけじゃないから」
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「いーよ、別に。男の人は、あんまり興味ないよね。でも、女の子の夢なんだから」
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「あ、うん。いや、でもそうじゃなくて」
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「ん?」
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「僕さ、やらなくて良いんじゃないって、前に言ったでしょ?」
「うん」
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「あれはさ、なんというかさ……」
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「大丈夫。判ってるよ。私の両親を呼べないから、気遣ってくれたんでしょ」
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「え? あれ、僕そのこと言ったっけ?」
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「ううん。でも、判るよ」
「そっか」
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「ウチの親が来ないんじゃ、大木くんちの親も来にくいもんね」
「いや、ウチの親のことはどうでも良いんだけど……」
「良くないよ。一人息子の結婚式じゃん」
「まぁ、ほら。でもそこはさ……」
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「あとね、私がやりたいの」
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「うん。僕もやってあげたいよ」あっ、なんか恩着せがましい言い方になったかな、と焦るけれど、でも本心だ。僕自身は特にこうしたいとかは無い。判らない。けれど、透子さんがやりたいというのなら、僕もやりたい。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
ビールを飲んで歯磨きをして、ベッドで眠る。ちょっと飲み過ぎたせいか、夜中に尿意で起きる。トイレに行って寝室に戻る途中で、Macの電源を付けっぱなしだったことに気付く。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
Twitterのタイムラインを追っていたら、なんだか目が冴えてしまって、せっかくだからちょっとだけ書こうかな、とPagesを開く。時刻は午前三時。まぁ、三十分か小一時間くらい……。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
あー、そういえばなんでこんなことしてるんだっけ、と考えて、夢にカポーティ出て来たんだよな、と思い出す。なんでカポーティなのだろう。胡散臭いカタカナ英語混じりのジャニーさんみたなカポーティ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
ぷぷぷw 深夜のテンション突入やで! ということで、エセ関西弁の男が出てくる話と、ジャニーさん繫がりでキムタクをテーマにした掌編をそれぞれ書き上げる。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
近年まれに見るハイペースや!と、保存してから背伸びをすると急に眠気が襲ってくる。ヤベ、夜更かしし過ぎた。明日というか今日、何時起きだっけ?
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
目頭を押さえながら、この掌編シリーズの最終回とかどうするかなー、と考える。気が付けば家族とか親とか子供とか、そういうテーマの物語が多くなってしまった。これは当然で、この頃の僕が結婚とか親とか子育てとか、そういうワードに普段から敏感だったせいだ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
なんとなく、透子さんの親を悪者にし過ぎた感はある。でもこれはフィクションだ。完全な作り話なのだ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
でもやっぱり僕は怒っていて、何に?と問われると難しいけれど、僕は自分の好きな人を肯定したい、というか否定すんな!と思っていて、そういう思いがそういう小説を書かせている部分もある。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
けれど、別にそれだけじゃない。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
小説に書いたからって、それらの問題が解決するわけではないのだ。じゃあ、なんで書いているのか。カポーティ、は置いとくとしても、僕はこれらの小説を書いた理由を考える。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
フィクションの上で悪者になんらかの制裁を下すことで、溜飲を下げているのか。いや、それは違うだろう。そんなことをしても意味は無い。やろうと思えば出来るかもしれないけれど、とても虚しい自己満足だ。安全なところから誰かを叩くネット炎上に群がる人たちみたいなものだ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
じゃあ、自分の考えを物語にして整理している? いやいや、それも違うだろう。現実の問題に対して絵空事で、あーでもないこーでもない、とやることに何の生産性もない。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
じゃあ、何らかの答えや真実、はたまた真理のようなものを物語の中に見いだそうとしている? どうだろう、近いような気もするけれど、違うと思う。うーん、判らん。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
実際に起こったこと、起こらなかったことをテーマやモチーフにして、僕は小説を書く。溜飲を下げたり考えをまとめたりすることも、まぁ、実際は少しあるだろう。それらに意味はないし意義もないのかもしれない。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
ただ、僕はそれらをテーマやモチーフにしていても、それらは物語のためのツールに過ぎなくて、僕が物語っているというより、物語が僕を語っている、という側面もあるのかもしれない。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
僕の中でまだ言葉や概念や考えとしてまとまっていないもの。理解や把握や認識はしていないけれど、確実に僕の中に芽生えた何か。それら無意識の産物が、書くという行為を通じて、言葉や概念よりも先に、物語に現れる。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
理解や把握や認識が訪れる前に、自分の中にある何かと、物語の表面ではない、描かれている情景の向こう側にあるものが繋がっている、そんな感覚。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
なんだか、難しくなってきた。というか胡散臭い。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
まぁ、でも別にそんなことはどうでも良い。単純に創作が楽しいのだ。僕は小説を書く。その行為の正しさとかは判らないけれど、判らないからって書いちゃいけないなんて決まりもないだろう。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
いい加減寝ないと明日ヤバいな、と思いベッドにもどる。静かに入ったはずなのに、透子さんを起こしてしまう。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
「何? トイレ?」くぐもった声で、透子さんが言う。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
「うん。ビール飲み過ぎたかな」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
「今何時?」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
「大丈夫。まだ夜だよ」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
横になって、布団を被る。あ、掌編シリーズの最終回をどうするか決めていなかった。けれど、もうかなり眠い。明日で良いか、と目を閉じる。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) November 20, 2015
いっそのこと、自分自身を物語にするのもアリかもしれない、と思う。Twitterに掌編小説を投稿しているインディ作家を語り部にすれば良い。僕が物語を語り、物語が僕を語るのを逆手に取るのだ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
一瞬だけ、良いアイディアだな、と思ったけれど、やめておこう。小説に本当のことをただ書くだけなんてのは、やっぱりナンセンスだ。フィクションは作り話だからこそ面白いし、ときに真実を描けるのかもしれないのだから。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
そういえば今夜から毛布が出ている。週末に透子さんが、頑張って洗ってくれたのだ。柔軟剤の良い匂いがする。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
段々と寒くなってきた。季節はグラデーションのように少しずつ移ろっていく。
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隣りで眠る人の体温を感じながら、ゆっくりと眠りにつく。
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こんな場面は恥ずかしくて、とてもじゃないけれど自分の小説には書けないな、と思う。
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そんな、秋の夜長です。
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おわり。
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秋の夜長: (What's the Story)Autumnal Nights? (ライトスタッフ!) 王木亡一朗 https://t.co/kMfqwAkzQj
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20
ありがとうございました。
— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 20