秋の夜長 第十一夜「Wait a minute」
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秋の夜長 第十一夜「Wait a minute」
#akiyonaga
— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8キムタクはやっぱりカッコ良い、と俺は思う。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8俺のお気に入りは「松葉杖のラガーマン」で、まだキムタクも18歳かそこらで初々しいけれど、このときからキムタクはキムタクだ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8練習中の事故で歩けなくなってしまうのだけれど、仲間たちを応援したい一心でリハビリをして、っていう２４時間テレビのドラマみたいな内容なのだけれど、キムタクのアクというか味というか、そういうのが、このときから既に出ている。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8そういう意味では最近は似たり寄ったりでパッとしねーな、なんて思うけれど「HERO」の映画は良かったし、やっぱキムタクはキムタクだよな、と（何回言うねん）。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8ただ、惜しむらくは、９０年代のキムタクはやっぱ凄くて、よくわからないけれど、なんか日本の芸能界というかテレビというか、そういうもんにガッと大穴を開けてくれそうな、デカい革命を起こしてくれそうな、スゲェパワーがあったと思うのだけれど、
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8結婚して子供が出来て、まぁ一般人のそれとはレベル感が違うのだけれど、そんな感じにパワーダウンというか、小さくまとまっていってしまった感はある。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8まぁ、でもそれは酷な期待だ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8キムタクも一人の人間で、彼には彼の人生があるのだ。だから、周りの人間がとやかく言っても仕方が無いし、誰か一人の犠牲で大勢が救われるなんてのは、フィクションの世界で留めておくべきだ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8そんなこんなで、でもやっぱキムタク凄いよなー、と思ったので職場でバイトの女の子に、それとなくそんな話をする。休憩中に。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「ねぇ、君ら世代からみて、キムタクってどんな存在？」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「え？ キムタクですか？ えーっと、なんかカッコ付けてるオジさん……、的な？」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「えー」あれ？ あ、そんなもんですか？ いや、たまたまこの子がこんな感じなだけ？「じゃあさ、今だと誰がアツイの？」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「えー、誰だろー？」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「玉木宏とか？」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「いや、それは無いですね。ちょっと古い」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「古いんだ」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「あ、福士蒼汰くんとか」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「あー、なるほど」お兄さんは、ぼやーっとしか顔が浮かびませんが。仮面ライダー俳優か〜。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「なんで、そんなこと聞くんですか？」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「いやさ〜、キムタクってかつて一世を風靡したのよ。今の若い子たちには、さすがに影響力ないか〜。ハウルの声やってたのも十年以上前だもんな〜」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「はぁ」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8と、彼女の貴重な休憩時間をこんな不毛な話題で潰してしまって、本当に申し訳なく思う。飲み干したペットボトル捨てて、仕事に戻る。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8俺の仕事は大して美味くも不味くもない饅頭を売る仕事だ。相手は、いわゆる観光客で、媚び諂うわけじゃないけれど、ニコニコしながら売る。売れないけれど。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8とは言っても彼女は上手いこと売る。十人通りかかったら最低でも一人には売っている。結構な量だ。俺は彼女が捌ききれない客を相手にするのが精々で、なんか情けない。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8ひとまわりくらい年下の女の子のおこぼれを与るハイエナだ。もうハイエナの「ハイ」ですら「high」みたいで烏滸がましく感じる。ローエナや。ワイはローエナなんや！
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「なんですか、ローエナって？」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8あ、ヤベ。心の中で叫んだつもりが口の中でちっちゃく言ってしまっていたようだ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「光の触媒になる第五元素の……」
「それは、エーテルでしょう？」
「詳しいな……」
「私、大学でそういうの専攻しているんで」
「あらあら。私立文系やな！」
「なんで大阪弁になるんですか？」
「いや、なんとなく」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8人通りが少なくなる。予定では次の観光バスが来るまでは、ちょっと時間がある。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「熊大路さんって、旅行とか好きですか？」
「いや、嫌いやな」
「だからなんで大阪弁なんですか」
「いや、照れ隠しというか」
「照れてるんですか？」彼女が笑う。
「いや、まぁ、なんてゅーかそのぅ」クッ、この子結構胸あるな……。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「でも、判ります。私もこの仕事してから、旅行、嫌いになりました。嫌いっていうか白けるっていうか」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「あ、そうなの？」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「はい。だって熊大路さん、絶対観光客のことバカにしてますよね。なんか判るじゃないですか、そういうの」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「あー、確かに」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「だから、観光地とか、そこのお土産屋さんとか行かなくなりました。最初は良いな、って思ってたんですけどね。こういうところで働くのも」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「なんで？」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「だって、みんなニコニコしているじゃないですか。機嫌が良いというか。高校のときにコンビニでアルバイトしていたんですけど、朝とかみんな急いでいて、機嫌悪いし」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「あぁ、確かにね」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「熊大路さんは？ どうして？」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「俺？ 俺はまぁ、なんとなくやな」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「だからなんで大阪弁なんですか」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8遠くのロープウェイが、紅葉の景色を横切っている。ゆっくりと。昔、アレに乗ったときは、地味に感動したよな、と思い出す。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「俺さ、昔俳優やってたんだよ」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「え、そうなんですか？」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「そう。やめちゃったけどね。そんで、そんときにエキストラの仕事で、ここに来たんだよ。二時間ドラマの撮影でさ。もうべったべたな温泉街で殺人事件が起こるやつ」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「でも凄い。テレビ出たことあるんですね」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「二秒くらいだけどね。だから、まぁ君と同じかな。ここの雰囲気、良いと思ったんだ」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「どうして役者やめちゃったんですか」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「そりゃ、決まってるでしょ。売れなかったから」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「でも諦めるの早くないですか」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「そうかな。もう三十過ぎのおじさんだよ」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「そういうもんですか」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「どうなんだろうね〜。でも、成功しているヤツってさ、共通点があって。みんな死ぬほど努力してるか才能のあるやつなんだよね」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「ミもフタもないですね」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「でも、本当だよ」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8俺は息を吸う。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「自分では努力してるって言ってても成功してないやつってどこかで甘えてるんだよ。だって、死ぬ気でやれば何でも出来ると思わん？ 死ぬ気でやるってのは成功するか死ぬかのどっちかなんだよ。成功してないし死んでもないってことは死ぬ気でやっていないんだよ」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「それ、自分に対しての言い訳にしてません？」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「え？」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「なんかそんな感じがします。ようは死にたくないから諦めたってことでしょう？ ダサいし言い訳乙って感じですね」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「言うね〜。まぁ、でも死ぬ気でやるほどの熱が冷めちまったのかも。もう良いかな〜、って自分で思ったんだよ」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「饅頭は？」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「は？」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「この饅頭はいつまで売ってる気なんですか？ 死ぬまでここで饅頭売るんですか？ それって死ぬ気でやるのと、どう違うんですか？」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「キッツイ娘やな〜」俺は笑う。でも彼女は笑わない。俺から目線を逸らし、もう二度と目を合わせてくれそうにない。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8午後の観光バスがやってくる。ここに来る前は金箔博物館にでも行って来たのだろう。そんな会話が聞こえてくる。彼女はおばさんたちに愛想良く饅頭を売っている。俺はそれを傍目で見ながら、袋詰めなんかを手伝う。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8彼女の言う通り、観光客ってのはみんなおしなべて機嫌が良い。でも、中にはつまらなそうにしている人も少なからずいる。どういう集団のどういうツアーかは知らないが、付き合いで参加しているのだろう。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8俺は、そのつまらなそうにしている人に声をかける。おばさんばかりだけれど、その子は二十代くらいの女の子だ。新入社員なのかな。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「どうですか？ この饅頭美味しいですよ」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8心にも無いことを、と自分でも思う。でも、この饅頭は決して不味くはないし、付き合いで参加している旅行のお土産だったら、これを買えば良い。この土地の名前も書いてあるし、何より判りやすい。温泉地の温泉饅頭だ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「美味しいんですか？」と、その若い子が言う。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「美味しいですよ。どれくらい美味しいかって言うと、普通の温泉饅頭くらい美味しいです」
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「ハハハ」とその子が少しだけ笑う。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「後藤さん、若いんだから、あっちのチョコレートとかの方が良いんじゃない？」と横からおばさんのリーダーみたいな人が言う。って、ババア！ 余計なこと言ってんじゃねぇ！
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「じゃあ、これ一つ下さい」その子は、笑顔でそれをいなすと、俺に千円札を渡す。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8「ありがとうございます」近くでみるとハーフっぽい女の子で、瞳が青い。おぉ、ちょっと緊張するな。ふと隣りを見ると、バイトの女の子と目が合う。何か言いたそうだけれど、仕事中だ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8その子は俺から饅頭の入った袋を受け取る。つまらなそうにしていた子が、ちょっとだけ笑顔になる。温泉地の温泉饅頭だぜ。味うんぬんというより、話のネタにはなるぜ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8ともあれ、俺はなんとなく、この子に饅頭を売って良かったな、と思う。観光客をバカにしているって言われて、それはちょっと当たっているのだけれど、当たっていない。やっぱりバカには出来ない。いや、バカにしてはいけなかったのだ。当たり前だ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8些細なことだけれど、俺はこのことに気付けてよかったと思う。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8一つのことに気付けたということは、これから先、何十何百と気付いていけるのかもしれない。何かをバカにさえしなければ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8そうなのだ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8難しいことはよく判らないけれど、とにかく俺の気分は今、上を向いている。それの何が悪いって言うんだ？
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8ようするに、キムタクなのだ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8ラグビーの練習中の事故で下半身不随になり、でも病院で自分より重い障害を乗り越えようとしている女の子と出会って勇気づけられ、プレーは出来ないけれど仲間たちの応援にいくためにリハビリをして、ついには松葉杖で歩けるようになったラガーマン。それが俺のキムタクなのだ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8最初にあのドラマを観たとき、観客の応援で選手が力を出すっていう理屈が俺には理解出来なかったけれど、そういうもんじゃないのだ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8ようは何かをやりきる前に諦めてしまうってのは、それをバカにしているようなものなのだ。そんでもって、何かをバカにするってのは、ダサいしカッコ悪いし、何よりキムタクじゃない。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8大切なのはキムタクだ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8今の若い人たちには、今ひとつピンと来ないかもしれないけれど、キムタクはやっぱカッコいいのだ。キムタクっぽいヤツってのもいなければ、キムタクが誰かっぽいってこともない。キムタクはキムタクなのだ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8仕事を終えるとバイトの女の子にお茶に誘われる。俺の俳優時代の話を聞きたいらしい。若いって素晴らしいな。大した好奇心だ。けれど、冴えないお兄さんの俺はちょっと気後れする。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8最近の若者は全然判らん。若者のすべてが判らん。明日も見えないし、トゥモロー・ネバー・ノーズだ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8彼女が俺の前を歩く。観光地にもスタバはあって、慣れた感じで入っていく。おいおい、ちょっとペース早いよ〜、と思いながら俺は「例のセリフ」を言う準備をする。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8さぁ、みなさん。ここまで来れば何を言うか判りますね？
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8判りますよね？
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8では、いきますよ。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8はい、せーのっ、
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8ちょ、待てよぉ〜！
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8って、誰に言うとんねん（笑）
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8まぁ、誰でも良い。いろいろ諦めるのは、いろいろやりきったあとにしよう。無駄になっても良いし、中途半端になっても良い。人間みんないつかは死ぬのだ。それこそ死ぬ気で！
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8なんだか強引なこじつけのような気がしないでもないけれど、ときに人生にはそういう強引さってのも必要だろう？
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8おわり。
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— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8一番正しい『ちょ、待てよ』 Ver.2013 https://t.co/zYNqpoBMcY @YouTubeさんから
— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 11月 8
