秋の夜長　第九夜「Can You Keep A Secret？」

秋の夜長　第九夜「Can Yon Keep A Secret？」 #akiyonaga
— 王木亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 10月 22

みんなは私のことを好きだけど、私はみんなのことをあまり好きじゃない。 #akiyonaga
— 王木亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 10月 22

正直鬱陶しい。でも、悪目立ちもしたくないので、適当に付き合う。そんな付かず離れずが絶妙なのか、結構みんな自分の悩みとか秘密とかを打ち明けてくる。「リサってなんか話しやすいんだよね」と、みんなが言う。でも私は、それがさらに鬱陶しいので、深い付き合いはしない。 #akiyonaga
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それは子供の頃からそうで、小学校に上がったときには保育園のときの友達とは別に友達を作ったし、中学、高校も進学するたびに以前の友達からは、ゆっくりとフェイドアウェイした。私は新しい友達に馴染み、いろんな人のいろんな秘密を抱える。でも、誰かに漏らしたことはない。 #akiyonaga
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ときどき、え？そんなこと他人に話しても良いの？ってことも打ち明けてくるから、迂闊に口に出来ないのだ。そういうところも、本当に面倒くさい。 #akiyonaga
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今まで打ち明けられたウケる秘密ベスト３。 #akiyonaga
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第三位は『ネットで見た黒魔術で両親を呪ったら本当に離婚しちゃった』という、コノミちゃん。ウケるポイントは、本人がそう信じ込んじゃっているってこと。あり得ないでしょw。オカルトだなーw。 #akiyonaga
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第二位は『小学生のとき、お姉ちゃんに川の水で作ったオリジナルミネラルウォーターを飲ませたら、病気になって入院しちゃった』という、ミオちゃん。ミネラルウォーターを『作る』って発想がホントウケる。肉親に毒を盛っちゃったパターン。オカルトより怖いよw。 #akiyonaga
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第一位『子供のときに親戚に誘拐されて三日三晩連れ回された』というユミカちゃん。これは堂々の第一位だけど、生々しすぎて引く。引くけどウケる。優勝。 #akiyonaga
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そんなこんなで高校に入った私は、違う中学の子たちに接近して仲良くなる。ハヅキちゃん、ユウリちゃん、モモカちゃん。帰宅部の私たちは、放課後にカラオケに行ったりゲームセンターに行ったり、スタバでお茶したりと、それなりにJKライフを楽しむ。 #akiyonaga
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いつも中心にいるのは私で、私の気が乗らないときは、全然遊ばない。あぁ、好かれてるなって思う。 #akiyonaga
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夏休みが終って文化祭が近付いて来たころ、私のグループに一人の女の子が入ってくる。 #akiyonaga
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ハヅキちゃんと同じクラスで、最初はお昼休みに委員会関係の連絡をしてきただけなんだけれど、気付けば一緒に行動するようになった。ショートカットで背が高いけれど、スリムっていうか華奢な感じが女の子らしい。 #akiyonaga
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でも、ちょっと困っている、ってわけではないのだけれど、その子、今までの子たちとはなんか雰囲気が違う。ずっと私のことを見ているのだ。好かれることには慣れているけれど、この子はちょっと違う。なんでだろうって、しばらく考えて、とうとうこのパターン来たか、と気付く。 #akiyonaga
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この子、私のこと好きだ。恋愛的な意味で。 #akiyonaga
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その子は、自己紹介のときに「高橋ピアノです」と名乗った。うわぁ、キラキラネームのひと初めて会ったよ、と思っていたけれど、後日ハヅキちゃんから、「あの子、高橋ピアノとかって言ってるけど、本当は道子だから」って教えられる。 #akiyonaga
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「え？　そうなの？」「うん。でも、みんなに『私は高橋ピアノです』って言ってる。名簿とかあるからバレバレなのにね。なんか、ちょっと変わった子かも。なんかね、昔、脳の手術したんだって。だから、変なんだよ。リサちゃんがイヤだったら……」 #akiyonaga
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「うーん。イヤではないんだけれど。ま、面白いから良いんじゃない？」 #akiyonaga
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そんな感じで、五人で遊ぶけれど、ピアノちゃんは、ふと二人きりになったときとかに、手を握ってきたりするようになる。自分で言うのもなんだけれど、私を見る目がキラキラしていて、あーこの子完全にそっちの子だー、と思うようになる。 #akiyonaga
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まぁ、私はそっちの趣味はないし、好かれる分には構わない。どうせ高校のときだけの友達だ。そういう感じで好いてくれる子を置いておくのも、面白いんじゃないか、なんて思うけれど、ついにピアノちゃんから手紙をもらってしまう。しかも呼び出しだ。 #akiyonaga
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告白されるの？私。でも、どうしよう。手紙には「あなたの秘密を教えてください。私の秘密も教えます」と書かれていた。秘密？まぁ、確かに秘密を共有すると仲良くなれるからね。 #akiyonaga
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放課後の美術室に私は向かう。あ、なんかちょっとドキドキしてる。女の子に告白されるのなんて初めてだ。応える気はないけれど、こういうドキドキ感も悪くないかも……。 #akiyonaga
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美術室に入ると、ピアノちゃんがいた。他には誰もいない。文化祭前で、作りかけの看板とか、木材とかいろんな道具で散らかっている。えー、こんなところで告白されるの？　ちょっとドキドキが減った。こういうのはさー、もっと雰囲気とか演出してくれないと。 #akiyonaga
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「突然呼び出して、ごめんなさい」ピアノちゃんはそう言って、私に近付く。「リサちゃんって、ホントに綺麗」「え、ちょっと」いきなり頭を撫でられて、胸をぎゅうーっと押し付けてくる。柔軟剤の香りがする。 #akiyonaga
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「ずっとね、こうやってお話したいと思ってたんだ」「うん。別に良いけど、ちょっと離して。苦しい」 #akiyonaga
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「頭のカタチも、ほんと綺麗だよね」「え？そうかな」ってまさかのパーツ褒め。いや、もうちょっと違う言い方あるでしょ、と思うけれど、悪い気はしない。というか、さっきからずっと手を握られている。ピアノちゃんの手は冷たくて、ちょっと湿っている。 #akiyonaga
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「ねぇ、キスしてもいい？」 #akiyonaga
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「え？ちょっと待っ……」言い終わらないうちにキスされる。うー！展開が早すぎる。でも、唇やわらかい。うーん、少し気持ちいいかも……。 #akiyonaga
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「リサちゃん……」ピアノちゃんはまっすぐに私の目を見つめる。「ピアノちゃん、本当に女の子が好きなの？私でいいの？」 #akiyonaga
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「リサちゃんは私がずっと探していた女の子なんだよ？」「ねぇ、ちょっと待って。本当に？私、ピアノちゃんが昔、脳の手術したって聞いたんだけど、もしかして、そのせい？」 #akiyonaga
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「ううん。違うよ」と、押し倒されるようなカタチで、近くにあった椅子に座らされる。膝の上に乗られて、またキスされる。「うむぅぐっ」今度は舌が入ってくる。って、これ私のファーストキスなんですけど……！思いのほかディープ……！ #akiyonaga
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ヤダ、糸引いてる……。頭がぼうっとしてくる。 #akiyonaga
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「フフフ」「え？」　え？何？　背もたれの後ろにまわされた手に、手錠をかけられる。 #akiyonaga
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「ピアノちゃん……？」「大丈夫だから」えーーーーッ！？いきなり、こういうプレイ？　待って待ってさすがに最初からこれはハードだよ？えー？いくとこまでいっちゃう系？暴走特急カナディアンエクスプレス？あぁ、ピアノちゃんの息が熱い。 #akiyonaga
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「脳の手術じゃないよ」「え？」 #akiyonaga
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ピアノちゃんは私の頭を撫でながら言う。 #akiyonaga
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「子供の頃にね、原発性アメーバ性髄膜脳炎って病気になったの。アメーバが脳を食べちゃうの。でも、最初は原因も何の病気なのかも判らなくて」ピアノちゃんは右手で私の前髪をあげる。 #akiyonaga
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「いろんな検査をしても判らなくて、最終的に、頭にドリルで穴を開けて、脳を採取したの。生検っていってね、細い金属の棒を深くまで刺して、先端にちょっとだけ脳を取るの」 #akiyonaga
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「なんの話？」「憶えてないの？」「え？」「もっと早く原因が判れば、頭に穴を開けずに済んだんだよ。私は意識なかったし、妹は怖くて言い出せなかったみたい」 #akiyonaga
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「妹？」 #akiyonaga
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「ミオのこと、憶えてないの？　問いただしたら、ミオはリサちゃんには話したって言ってたよ？」「え？」 #akiyonaga
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「病気のせいで小学校を一年やり直したし、中学浪人もしたから。でも、リサちゃんと同じ学年になれて、今、こうしている」「ミオちゃんのお姉ちゃん？」「そう」「でも、名字が違う……」「親が離婚したの。フフフ。ねぇ、どっちがいい？」「え？」動けない。 #akiyonaga
— 王木亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) 2015, 10月 22