セルフインタビュー「夏の魔物」前編
「異形のモノ」をテーマにした、けれどホラーでもSFでもファンタジーでもない、短編集。
──ゆるりと。
はじめますか。
──えー、お久しぶりです。那須野穣(ナスノ・ミノル)です。
インタビュワー? インタビュアー?
──まぁ、どちらでも。二ヶ月連続刊行の二作目、短編集「夏の魔物」が出ましたね。
はい。御陰さまで。
──ついでに30歳になった?
そうなんです。二十代が終わりました。夏とともに。
──どう? なんか変わった?
いえ、別に。
──そっけないな〜。
30歳の話はいいですから!
──いや、でもさ? 30歳だよ。この前までは29歳だったわけじゃん? 九捨十入すれば20歳だったわけだよ?
九捨十入て。ないでしょ、そんなの。
──五捨六入はあるけどね。
点数計算の話も結構です。僕、麻雀出来ませんし。
──30歳から付与される権利ってなかったっけ? 20歳の飲酒喫煙的な。
参議院議員の非戦闘員ですかね。だから、30歳の話題はもういいですから!
(休憩)
──じゃあ、何から聞いていこうかな。そうだな、先ずはタイトル「夏の魔物」の由来を。これってスピッツの曲だよね。
そうですね。まんまです。スピッツの曲も良いんですけど、小島麻由美さんのカバーも素晴らしくて。
──トリビュートに入ってるヤツだ。確かにね。だから、女性が主人公なの?
そうです。
──女性主人公の一人称って、結構書いているよね?
そうですね。わりと好きです。
──そうなの?(笑)
はい。言葉遣いとか考え方とか、男性だとどうしても「自分度」みたいなのが高くなっちゃうんですけど、そこから距離を取れるというか。
──女装趣味みたいな感じ?
いやー、それは違うと思いますけど。でも、どうだろう? そういう部分も無きにしも非ずですかね。
──女装願望あるんだ?
どうでしょう(笑)。まぁ、5%以下かな。
──「弾けすぎ」みたいな感想もあったけど。
どうなんですかね。たしかに「サイクロプス」は、そんな感じですけど。♡も使ってるし。
──初出は群雛だよね。「♡」は物議かもした?
いや、わかんないです(笑)。僕は変換で出てくるから普通に使えるだろうって思ったんですけど、ちょっと確認はあったみたいです。よく判りませんが。
──群雛といえば「ライトセーバー」も先に雑誌に掲載されて、こっちに収録だね。
「初出:群雛◯月号」みたいな感じをやりたくて。
──「ライトセーバー」は、ちょっと変わった視点だね。
そうですね。二人称っぽいんですけど。最初はタイトルも違ってて。「ウォッチタワー」ってタイトルで、「頭の中の妖精さん」ってテーマは同じなんですけど、主人公の一人称語りで、妖精さんは二重カギカッコ(『』)で喋る、という構成でした。でも、なんだか上手くいかなくて。ちょうど、その少し前に藤野可織さんの「爪と目」を読んでいて。二人称っぽい感じも面白いな、と。
──芥川賞取ったヤツだ。
そうです。まぁ、僕の方は厳密に言えば二人称ではないんですけど。
──あんま言うとネタバレかね?
多分。
──「頭の中の妖精さん」が語りかけてくるってのは、アブナイ感じだね(笑)
そうですか?
──妄想の妹が語りかけてくる小説とかもあるじゃん?
あぁ、あの北海道の人の?
──そうそう。
ありましたね(笑)。
──群雛に掲載された二作と、表題作。あとは書き下ろし二作っていう構成だね。じゃあ、次回は残りの二作についてお話伺えればと。
はい。ちなみになんですけど、ナスノさんの肩書き(?)って、何なんですか?
──肩書き? なんだろうな。うーん、……いジャー……スト(聞き取り不明瞭)
えっ? なに? なんて?
──インディ文芸ジャーナリスト……。
インディ文芸ジャーナリスト?
──そう。
インディ文芸ジャーナリスト!
──何回も言うなや。
インディ!文芸!ジャーナリスト!
──嘘。やっぱ今のなし(笑)
ハハハ(笑)
後半へ続きます。