僕の神様、最終回「森博嗣」
先日、ふとツイッタにこんなことを書いた。
僕にとって神様みたいな人って誰だろう
— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) May 8, 2015
原田宗典「優しくって少しばか」
森博嗣「僕は秋子に借りがある」
保坂和志「この人の閾」
村上春樹「ダンス ダンス ダンス」
神様クラスだと、これらだろうな〜。
— 王木 亡一朗 (@OUKI_Bouichirou) May 8, 2015
ということで、黙々と自由に、僕の神様のことを書いていこうかなと。
さて、最後を締めくくるのは、森博嗣さんです。
森先生です。工学博士。天才です。
僕は秋子に借りがある I’m in Debt to Akiko 森博嗣自選短編集 (講談社文庫)
- 作者: 森博嗣
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初めて秋子に会ったのは、大学生協の食堂だった。ちょっと壊れている彼女と授業をサボって出かけ、死んだ兄貴の話を聞かされた。彼女が僕にどうしても伝え たかった思いとは?胸が詰まるラストの表題作ほか、「小鳥の恩返し」「卒業文集」など、文学的な香りが立ちのぼる、緻密で美しい13の傑作短編集。
第一回メフィスト賞受賞の作家さんで、いわゆるミステリ作家として、世間では認知されているようです。ですが、僕が初めて読んだのは「スカイクロラ」で、シリーズを読んだ後「すべてがFになる」を読んだものの、当時毎日更新されていた「MORI LOG ACADEMY」が面白く、先生のエッセイや非ミステリィ作品ばかり読んでいました(今となってはほとんど読んでいますが)。
森先生はアンチミステリィ作家を(ご冗談として)自称されていたりもするので、エッセイなどに、「ここがヘンだよ、ミステリィファン」的なことを書かれていて、「こんなの本格じゃない」「面白いけど、ミステリィじゃない」などと言いがちなミステリィファンをクサしています(形式にこだわることに対しては、『伝統芸は保護の対象になる程度の希少性が価値の大半だ』、とも)。子どもの頃、ホームズなどは読んでいたものの、ミステリィ小説は全然読んだことのない僕は、「そうか〜。ミステリィファンって、そんな変な人たちの集まりなんだ〜」と素直に感心(?)していました(怒られるぞw)。ミステリィ小説は、ほぼ森先生の本しか読まないですね。ミステリィだから読むというわけではなく、森先生の本がたまたまミステリィだから。(ミステリー映画は見ますが)
森先生の本は小説でもエッセイでも、示唆に富んでいて大変参考になります。理路整然としているのに押し付けがましくないところが好きです。
登場人物たちも、少し世間の平均よりもズレた、いわゆる理系キャラがたくさん出てきます。草食系というか。
そんな先生ですが、ちょっとお茶目な一面も。というか、これは大変不敬なことで恐縮ですが、少し引用を。ご本人が、そう仰っているわけではありませんが、半自伝的な側面を持つ作品で、工学部の学生である主人公が出会った、人生の師とも呼べる喜嶋先生のことを語る作品です。
喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima (講談社文庫)
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工学部の助手になった主人公と、院生時代の同級生だった女性との会話です。
「嘘だ。奥さんが待っているでしょう? えっと、子供もいるの?」
「いる。二人」
「うわぁ、信じられない。橋場君が子供作ったんだぁ。そういうことしない人だと思ってたけど」
「何? そういうことって」
森先生がこのシーンを執筆されているところを想像しただけで、僕はニヤニヤしてしまいます。あともう一個。スカイ・クロラシリーズ第一巻「ナ・バ・テア」の解説から。解説は、よしもとばななさんです。
森先生にこの小説を読んだ感想をメールしたときに、
「一発で××! という話ですね」と書いたら、
「うわあ! 恥ずかしい!」というお返事がかえってきました。
確かに一発で××なんですが……w よしもとばななさん、面白いですよね。(××が何かは重大なネタバレになってしまいますので書けません……。なので読んでない人には意味が分からないと思います。すみません。)
とまぁ、下世話な話題はここまでとして。
僕の神様シリーズ、最終回ですが、「神様」としているのも、先生の影響です。
最近、若者を中心に「神曲」とか「神作品」みたいな表現が多く、「これって神じゃね?」「この人は神!」というようなカジュアルな使い方をされています。「ネ申」というやつですね。
これに対して、「せめて『神様』と『様』をつけたらどうか。敬っているのでしょう?」と、どこかに書かれていました。影響というか、「教え」に近いですね。
いわゆる文学的な影響という部分は前回までの方々に比べると多少(ほんの少しだけ)薄いかもしれません。ですが、「モノの道理」というか、「世界を見る為の眼」を教えてもらったような気がします。それはきっと、森先生が科学者でもあることが大きいと思います。普通の小説だけを読んでいたら、今よりは確実に狭い人間になっていたでしょう。(今でも広くはありませんが。当社比です)
世界が、どのように何で作られているのか。世界とは何なのか。ややもすると、科学的な視点というのは、文系、あるいは文学的な視点とは相容れないものように思えます。
しかし、本当にそうでしょうか。
科学も文学も、どちらも「世界を見る」というところから始まっている、と僕は思います。それを見るときの「ツール」が違うだけで。
空がなぜ青いのかと考える。それを詩や小説にすることと、それを調べることに、大きな差は無いように思います。
この大きな星には、何があるのかな。
きっと、沢山の孤独があることでしょう。
その沢山の孤独を忘れるために、
もっともっと沢山の夢が、
あれば良いですね。
大袈裟かもしれませんが、初めて森先生の作品を読んだとき、「こういう考え方をしても良いんだ」と、救われたような気持ちになったことを憶えています。
そして、それは前回までで、ご紹介した三人の方々も同じです。
「世界を見るための眼」を僕に授けてくださったかの方々は、やはり僕の神様です。
おわり。
実験的経験 Experimental experience (講談社文庫)
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上級者向け。
神様が殺してくれる。