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KDP本をいくつか読んでみましたシーズン1第三回「エンドフォールズの手紙」

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エンドフォールズの手紙

エンドフォールズの手紙

 

 

ワールドワイドウェブの死、細菌兵器の散布、そして閉じて行く国——。
記憶を失った幼なじみと僕の前に、八年前の誘拐犯の娘が姿を現した時から、全てが恐ろしい勢いで動き始めたのだ。

張り巡らされた陰謀と、絡み合う思惑。
自分たちの忘れ去られた過去や、父親たちの思いを解き明かしながら、やがて物語は一つの和解の形を見出していきます。

大人も楽しめる現代物の冒険小説、というつもりで書きました。
お楽しみ頂ければ幸いです。

 

 ちょっと恥ずかしいのですが、この作品を読んだ後に思ったことの一つに、「小説(物語)ってのは、一体なんなのだろう?」というのがあります。これは、僕が多かれ少なかれずっと思っていることで、偶然にも今書いている短編でも少し触れている課題(?)でもあります。とまぁ、自分のことは置いておいて、「エンドフォールズの手紙」です。良いタイトルですね。そして表紙も良い! 全てを読み終えてから、このタイトルと表紙をあらためて眺めると、溜息が出てしまいます。

 内容紹介にもある通り、一つの冒険小説です。読み進めていくうちに、頭に浮かんだのは「羊をめぐる冒険」です。ストーリーとかは全然違うのですが、思い浮かびました。冒険、というワードだけでそう感じる僕の頭が陳腐なのかもしれませんが(笑)

 アクションシーンも、随所にありましたが、ストレスなく頭の中で展開出来ました。実は、小説のアクションシーンって、結構苦手なのです。空間把握能力が低いのです。(故に方向音痴)でも、全然大丈夫でした。きっと描写がシンプルでスマートだからなのでしょう。

 一方で、情景描写も、きれいだなと感じました。そして、この感じを的確に表せる文章を読んだことがあります。

「音の深い響きや光の微妙な色合いを、簡潔で説得力のある文章に置き換えることができた」

 そうそう、そういう感じ、と。「ワールドワイドウェブの死」「細菌兵器」「閉じて行く国」「誘拐犯」「陰謀」「思惑」と、不穏(?)なキーワードが並びますが、上記の通りきれいな描写というか、僕たちが日常的に手にしている感覚を的確に描いているので、「遠くで起こっていること」「フィクションである」という感じが全然しません。うーん、うまく表現出来ませんが、「リアリティ」とは別の軸の「近さ」というか「身近さ」を感じさせます。日常の延長線上に、この物語はある、というリアリティというよりかは、身近さというか。って同じこと繰り返し書いているな(笑) 英語で言うところの何だろう? nearly?closely?

 

 長編小説ですので、読むのに時間はかかると思いますが、クライマックスのスピード感と、表紙とタイトルがピタッとはまる瞬間が心地よいので、オススメです。

 全て読み終えた後、今自分が読んでいたものが「エンドフォールズの手紙」なんだなと、思えるのです。そういうのって、素敵じゃないか。Wouldn't It Be Nice.